こよみと暮らす こよみと暮らす 第九回『大暑』 水面から浮かび上がるような、白い花。梅にも似たその姿から、梅花藻という名前を持つ植物です。ゆらゆらと水の間をたゆたう様子、想像しただけでもちょっと涼やかな気持ちになる。水温が一定な冷たい清流でしか育たないので、温暖な地域ではなかなかお目にかかれない。滋賀県醒井の地蔵川には500mにわたって、この梅花藻が生育していて、夏場、その姿を見に訪れる人も多いそう。 ... 2021.07.16 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第八回『小暑』 ついこのあいだまで市街地の公園や庭先で、大きな玉のように花を開いていた紫陽花は、そろそろ夏の花に主役を譲ろうとしています。時間をかけて少しずつ枯れていく姿も美しいものですが、少し涼しい山あいの地域に入ると、まだ自生の紫陽花の生き生きした様子を楽しむことができるところも。今回紹介した写真は、奈良県宇陀市で撮影されたもの。木々のしっとりとした空気のなかに咲いているのはコアジサイという品種で、花の部分は5cmほど。 ... 2021.07.02 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第七回『夏至』 いらかの波と雲の波。という歌いだしではじまる、鯉のぼりの歌を思い出すような風景です。奈良市の中心部からほど近い歌姫町。写真は、旧街道沿いの古民家の屋根を捉えています。もともと平城山丘陵と呼ばれるこの付近一帯では、瓦に必要な粘土や燃料が豊富で、瓦窯跡がいくつも残っています。初夏の日差しに照らされて、よく乾いた瓦。ちょっとお布団でも干したくなるような屋根です。こんなふうにカラッとした天気の日が、この季節は特に貴重に思えてきます。 ... 2021.06.18 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第六回『芒種』 岩の間を勢いよく流れる川の水、その中ほどに見えるのは、五つの花弁が星のように見えるヒメレンゲの可憐な花。カメラがシャッターを切るわずかな間に、あっという間に目の前を通り過ぎていく水の姿と、じっと止まっている植物。その動と静の対比を切り取った一枚です。しっとりと濡れている苔は、それこそずっと同じ場所で、風や川の流れを見送り続けてきたのかもしれません。さて、季節は6月です。今年の奈良は例年より早く梅雨入りしました。 ... 2021.06.04 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第五回『小満』 ちょうど5月の連休のころでしょうか。さらさらと風に流れる藤の花、かなり高いところをそよいでいるように見えます。撮影されたのは、奈良公園。東大寺や興福寺など歴史の教科書でも馴染み深いお寺があり、鹿たちがのんびり過ごしている。修学旅行を思い出す人もいるかもしれません。その一角にある春日大社は、藤の名所でもあります。藤棚から地面に届くほど房の長い「砂ずりの藤」をはじめ、20品種もの藤が栽培されています。 ... 2021.05.21 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第四回『立夏』 少し前まで、柔らかく淡い色味をしていた木々の葉も、しっかりと緑が濃くなり、厚みも増して。道を歩けばサワサワと街路樹の葉が揺れる音がする。仕事中、草刈機の音が気になり締めていた窓を開けると、風と一緒に刈ったばかりの草の匂いが届きました。夏は来ぬ、立夏です。奈良県南部、吉野の山々も、冬はしんと眠ったような雰囲気だったのに、今ごろは彩りを取り戻し、新緑がモクモクと立ち上がってくるかのよう。 ... 2021.05.07 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第三回『穀雨』 春先に花をつける白山吹の花。ヤマブキと言うと、色の名前としても知られる黄色い花が思い浮かびますが、この「白山吹」と「山吹」は花弁の数なども異なる、別属の植物なのだそう。年度も明けて一段落した今日このごろ、新生活の疲れが出ていませんか。ちょっと一息、お茶を入れて、休憩にしましょうか。週末の天気がすぐれないときは、「まあ、無理せず家で休め」というメッセージなのかもしれません。 … 2021.04.16 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第二回『清明』 するすると滑らかな水の流れが、草を湿らせて下っていく。やがて吉野川に注ぐこの水流は、「象(さき)の小川」と呼ばれ、万葉の歌人も歌に詠んだとか。さて、季節は春。二十四節気では清明です。その意味を紐解いてみると、「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」とあります。つまりは、自然界のものたちが春先の清らかな空気のなかで、生き生きと活動してはじめる季節。たしかに、野の花や草もピンとみずみずしくなって、タンポポ、菜の花、目に飛び込んでくる色の種類も豊富になってきました。... 2021.04.02 こよみと暮らす
こよみと暮らす こよみと暮らす 第一回『春分』 奈良県・宇陀市。大きな山を背景に、大きく枝垂れて咲く桜。鮮やかな桃の並木のなか一本でひときわ存在感を示すこの桜は、樹齢約300年。この地にゆかりの戦国武将から「又兵衛桜」と名付けられています。そんな歴史背景を知るとなおさら、石垣の舞台から乗り出すように咲くその姿に、なんだか芝居のクライマックシーンのような迫力を感じます。そんな春の一場面。撮影したのは、井上企画・幡の創業者である、写真家の井上博道(はくどう)です。 ... 2021.03.19 こよみと暮らす